松本圭二/アストロノート(抄)

ひどい死臭ですね
ええ
おい浮遊、わしら自縛組にちっとは還元せえや
患者さんにもミミクロを与えるべきだわ
だってねえ
イツキ君は歩けますか?
虫捕りに行こうよ
「先日は…たいへん失礼してしまったのではないでしょうか…」
エティック?
やる気ないなあ
短く乾いた舌の官能を
どうしてもトンボが捕りたいと娘が言いますので
「あかんあかん何言うてまんのや。ぐるっと回りまんがな」
クネリ?
傷?
おれなんか水子や
眼球黄色どんより汚濁組合
ラムネとか、クリームソーダ以外には
ジョルジュとかクラウディア、女の子は消える消える
断言は勇気ではない
「ずりよる」もの?
U/海
記憶が定かではございませんのでまったく
はい
結局ね、こんなん経済活動でも何でもないね。道楽や。生活費が手に入ってようやくナンボですから。チンポじゃありませんよ。ナンボですよ。
瞑想するタイスの背中に
青空
そして爆発
有明海までノンストップで失踪した時は確かに輝いていたのですがこの二人、その帰り道で道に迷ったのでしょうね。わたしはわたしだけね。「車の運転を習っておくべきだったわ」とフランス映画なら言うかもしれませんが所詮ね、カローラですから三重ナンバーの、いつになったらこの人は東京に連れて行ってくれるのかしら。
え?
知らん
ゲイブ?
だいいち私はあなたたちが何者なのか知りません。タクシー・ドライヴァーズ・ユニオンですか。何ですかそれは?
忘れて下さい
マーラーは長すぎる
そしてバンダイサン
ア、イ、ウ、エ、オと言えるか
どんなにスクリャービンな秋を待ち望むことか
ガブリエ、ラ?
俺は仕事。今朝彼女が出勤しようとするのを子供たちは泣叫びながら引き止めようとしていた。玄関先で。玄界灘で。俺は布団の中でボーとしながらそれを聞いていた。「じゃあね、カーハちゃん、パパ起こしてね」「やだよおーっ、カーハちゃんチビっ子だからパパなんか起こせないよう。ママがいいよお、ママ保育園連れてってよお」
書いてみろよ
このところナマズ喰わずで
アメリカはやっぱり第7大陸を発見できなかったのだし
要求には応じられない
ああでもあの歴史的失態は
いやわかんねん、でもな
「ソーダ中毒と言ふんだつてよ」
今?
樹は歩きますか?
とにかくおれたちには毒ガスだのミサイルだのを開発する資金も時間もないのだから、パチンコ、ナイフ、その他ありもので何とかするしかないわけだが、そうした苦境にある以上精神の昂揚こそが生命線である。しかるにそのザマはなんだ。もはや武装蜂起を呼び掛けるに足るだけのマニフェストが君に書けるとは思えない。もうリミットは過ぎたのだし、このままダラダラと君の内部の葛藤に付き合うのもどうだろうか。おれは今でも期待はしているのだし、書けるとすれば君しかいないだろうことは同志の多くが理解していることでもあるが、今の君では駄目だ。最低だよ。いつからそんなふうになってしまったのか、何が君をそれほど消耗させているのか。まあそれを聞いたところですでに同志諸君を納得させることはできぬだろう。残念だが君はすでに見切られている。悔しいと思わないかい?
ラアー!
まったく理解不能だよ。家族を犠牲にしてまでやっていることに少しも自信が持てない、責任がとれない、ということは何なのか。どうして詩人であることを周囲(親兄弟、親族一同、同僚、友人)にひた隠しにしないといけないのか。そんなにみっともない思いをしているならやめればいいじゃないか。そもそもなぜお前はよりにもよって詩なんか書いているのか。小説でも書いてみろよ。
ラアーッ!
最後の夢では僕はとうとう首謀者になっていました。とにかくそうなってるんです。設定が変ってしまってる。それで僕はやっぱり「ドームに行け」と命令しています。運転手は京本政樹なんです。僕の夢には結構出てきます、京本政樹が。理由は判りません。だいたいが悪役ですが、ここでは運転手をしていた。彼は僕の命令で動く事になっていますから、何か命令しなくてはいけませんよね。でもドームへ行けという以外に、僕は何を命令していいのか判らないんです。この作戦自体がまったく理解できていない。我々は何をしているのか。目的は何で、誰に何を要求しているのか。いったいTDUとは何か。TDUと僕の関係も判りません。でも首謀者なんです。とにかく首謀者。だからここでは首謀者を演じなければならないんです。それができない。で、京本政樹が何か嫌みっぽいことを言うんです。「おまえ首謀者のくせになんだ」みたいな。ねちねち僕を追い込んで行くわけ。
ロボコンて片輪ちゃうのん?
いいえ

賞金100万円だ
ええよおれはそんなんもう
何?
猿「キーッ!」
それからと言うもの
チュル?
チュルリラ?
ナマズ喰わずで
ベルリラ?
さあ
チャルメラ?
わかりません世界人類が言うことなんて
それっておれが悪いんか?その朝、僕はまだ夜明け前に目を覚ましたんです。確かヘリコプターの音がしていたと思う。それで起こされたんだと思います。そんな時刻にハッと目が覚めることなんて普段はまったくありません。だからかなりヘリコプターの音が響いていたのだと思う。でも判りません。僕が当時住んでいたのは世田谷の松原なんです。東京から神戸までヘリコプター飛ばしますかね。飛ばします? あ、そうか、関西圏の支局に電話が通じなかったとか。まあそういうことならあり得るな。とにかくヘリの羽根音で眼が覚めた。まだ夜明け前だ。僕は一瞬嫌な予感がしてすぐにTVをつけました。NHKを見た。すると夜明け前の真っ暗な神戸の街が映っているんです。映っていると言っても何も見えませんよ、真っ暗だから。ただ小さい炎が横に連なっているんです。漁火みたいだと思いました。それは震災直後の映像だったと思います。報道の方もまだ被害状況が確認できないものだから淡々とした感じだった。神戸の方で大きな地震があって火の手があがっている。それだけしか判らない。
はい、マツモトです
霊ら?
最初は恐い顔をしていましたが、砂糖菓子をあげると少しニューワになりました
ああもう謎
うん
天井や床に視線を打ち棄てております
ガブ君?
ええゲイブたちの音響とその変容に支配されて
ああそれも職業病だ
かように私は狂気に対してはなはだ不寛容であり、かつ無理解な態度をことさら通して来ましたが
はいポーズ
いずれにせよたいしたことありません
ダメか。回転寿司が俺は好きだよ。回転するやつはみんな好きだ。回転しようか。家で、家族で
どうして爆発するの?
いかなる
可能性の飽和状態
「なんでんねんお客はんペロペロピーって。その類いの風俗ならぎょうさん知ってまっけどなグワッッハッハ、せやけどドームいいまんのは聞いたことありまへんなあ」
ええやんそれで
え?
うん、それでいいと思う
もう何を書いているのかわからん。『智恵子抄』や『史之命』みたいなとんでもない恋愛詩集を一冊書きたい。でもそれは歳とったら書けん。若気だけで突っ走らないと。俺はもうそんな歳と違う。手遅れだ。失敗した。もうこうなったらナイス・ボディーなわっかいねえちゃんに誘惑してもらうしかない。メロメロにしてくれないと。
え?
チャイクロ?
また旅に出るのか!
もしもし?
大きな犬の霊が私になついておりまして、かわいいものでいつも傍らでしゅんとしております
でもな
そんなんな
メーターに支配されている限り
幼い心
アルベルトの部屋
あれは最悪だよ、名前が
本?
「空間から突然光り輝く玉があらわれ、その中から登場するシャドー・ビーイング」
クネラ?
お壕をずっと歩いて行くと赤坂です
団地妻ってわたしのことなの?
黄色眼球どんよりと
「中まで入るって……すんませんどこのドームでっか? この街にはお客はん、ドームなんておまへんで」
そうちゃうの?
日常ともあろうものがどうして?
僕はディズニー・プロのキャラクターのなかでは「クマのプーさん」が好きです。あれは原作がちゃんとあるんです。だから一応は物語なんです。ディズニーはひたすらキャラクターとして売ろうとしていますが、終わらない/終われないゾンビ的存在のネズミ野郎とは生れが違うんですよ。みなさんミッキー・マウスのエンディングって知ってますか? 知らないでしょう? 無いんです。でも「プーさん」は終わるんです。クリストファー・ロビンが学校に行く事になって、終わるんです。「もう君たちとは遊べないよ」ってクリストファーが言います。だって彼はもう社会に出て行かなければならないから、いつまでも部屋の中で「ぬいぐるみ」たちと一緒に空想の世界に浸っているわけにはいかないんです。「プーさん」に出て来るキャラクターたちは実は「ぬいぐるみ」です。その「ぬいぐるみ」たちがクリストファーの想像世界にある「100エーカーの森」のなかで暮らしている。そういう設定なんです。ここではクリストファー以外の人間には顔がありません。クリストファーのママも声だけの存在。絵としては足ぐらいしか描かれていません。徹底してるんです。で、原作者である物語作家は、そうした幼年時の秘めやかな歓びを強引に引き裂くことで終わらせるんですね。その状態を奪い取る。